新時代の風に吹かれて 現象考学研究所〜神戸から
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景気回復を実感できないという危機
政府筋やマスコミの発表によれば、景気の底は昨年の４月であり、現在も
景気はゆるやかに上昇中と言われています。日本経済全体で見れば、まさに
その通りなのでしょう。しかし、町中を歩き回り、中小企業経営者の方々の
お話を聴く限りでは、「実感できない」「自分の周囲を見渡してもそうは
思えない」という声の方が多いのです。ある業界では、１０社のうち多忙
なのは２社くらいと言いますし、不況よりも天気のほうが業績への影響が
大きいと言われたある業界の企業は、景気回復と言われる中でも低迷打開に
苦闘しているようです。そこでふと思い当ったのは、このような現象こそが
構造転換期の過渡現象かもしれないということです。
今の現象をこのように捉えますと、非常に恐ろしい現実が見えてきます。
「政府は何を見てあんな発表をしているのか」とか「マスコミは政府の
片棒をかついで、国民に対する景気付けをしているのではないか」とか
言いたくなる気持ちはよく分ります。でも全体で見れば景気は上昇している
ようですから、景気回復を実感している人々や業界もあるのです。構造転換
の側面からこれを見ますと、景気回復を今実感できない企業は構造転換の
完了する頃には消滅する、という危機を孕んでいるとも言えるのです。
景気回復を実感するとは、今の仕事量や計数のことだけを言うのではあり
ません。今後に期待できる良い情報を掴んでいるか、ということも含めての
ことです。その情報をくれるのは、顧客以外にはありません。顧客から
その類の情報が得られないならば、その顧客も消滅の危機を孕んでいるか、
自社が顧客の動向を掴んでいないか、顧客の成長路線に載せてもらえて
いないかのいずれかでしょう。
政府批判を一旦脇に置いて、自社と顧客との関係、顧客の動向や戦略等を
研究し直して、景気回復の実感が持てる側に入る努力をしたいと思います。
チェックを超えて、レビューのすすめ
部下を持つ者、特に管理者の仕事の中で重要なものの一つに、メンバーの
仕事の状況把握と指導があります。これを上手に行う管理者のチームは
よい業績成果を残します。そればかりか、よい人材を育てることでも評価を
得ています。その鍵はレビューに有ると言っても過言ではないでしょう。
ほぼ全ての管理者がメンバーの仕事のチェックをします。チェックとは、
仕事の状況やメンバーの状況を調べ、それが計画や構想に合っているか、
これから先に問題発生の可能性はないか、などを確認することです。
メンバーとの間のコミュニケーションは、報告のレベルを超えません。
更にあっても、励ましの言葉や注意を促す言葉が加わるくらいでしょう。
レビューとは、もっと双方向性、共創性の強いものです。その中には
チェックの内容も含まれます。管理者はメンバーの報告や相談を受けて、
ただ確認したり、考えたりするのではなく、メンバーの今後の行動について
彼等と一緒に考え、意見交換や議論をし、アドバイスを与え、メンバーが
自分の取るべき最善の行動を自分で見い出すことを支援します。時には
指示・命令もあるでしょう。激励の言葉だけのこともあるでしょう。
大切なことは、上記のようなプロセスを踏んで進めることなのです。
これからの行動についての意見交換や議論は、生半可なスタンスでは
失敗します。これから結果を出すための行動、失敗するかもしれない行動に
ついての議論ですから、逃げ腰ではダメです。レビューをする立場の者には
自分の人格と能力を賭けた対応が求められるのです。だからこそメンバーも
真剣になり、業績も上がり、人も育つのです。
自分がチェックの域を出ていないとふと感じた時、自分のスタンスを反省
してみるのも、管理者としての自己革新の一助になろうかと思います。
機種・品種に執着せず、技術の活用分野の追究を
機種・品種という呼ばれ方をする商品は、技術の活用から生まれたものと
言えます。しかし、一旦機種・品種ができあがりますと、これが独り歩きを
始めます。技術は機種・品種の付属物のように思われ、機種・品種が主人の
座におさまってしまいます。実はこのような受け止め方から発生する弊害が
目につくようになってきました。
当然のことですが、機種・品種には寿命があります。従って、寿命が来ると
思われる時点で撤退することが、重要な経営判断になります。
しかし、撤退の時期が遅れたり、見えづらかったりするのが現実のようです。
機種・品種には必ず担当責任者がいます。機種・品種にかげりが見えてきた
時でも、担当者がこだわりを捨てることは容易ではありません。担当者は
機種・品種に寿命が来たとは思いたくありません。営業マンは新しい販路の
開拓に必死に取り組みます。技術者は新しい機能を付け加えて機種・品種の
魅力を高めれば何とかなると考えて努力します。担当者から経営トップへも
こだわりからくる希望的な見通しが報告されます。このようにして、寿命が
きた機種・品種からの撤退が遅れます。
ところが、こんな時でも機種・品種の基になっている技術の活用場面は
広く、これが有望なことも多いのです。機種・品種ではなく、それを生んだ
技術の活用に目を向けて考えれば、機種・品種へのこだわりや執着心から
離れて、撤退も選択肢の一つとして冷静に対処することができ、この技術の
新しい活用分野を切り開くことに思いが至るのではないでしょうか。
主人の座におさまるのは技術であることを再確認し、急激に変化する
事業環境に合った対応をしていきたいものです。
５つの質問に答えられますか（ドラッカーの経営哲学から）
経営の舵取りが難しくなっている今、企業の方向性を明らかにすることが
重要視されています。ピーター・ドラッカーの経営哲学を基に作られたという
５つの質問がこれに役立つと思われますので、一部を紹介します。
１．我々の使命（仕事）は何か
・何を成し遂げたいのか ・組織が求める具体的な成果は何か
２．我々の顧客は誰か
・誰のお役に立ちたいのか ・顧客にどんな価値を提供したいのか
・顧客は変化したか、それはわが社にとって何を意味するか
・わが社の製品やサービスを買わない人の、買わない理由は何か
３．顧客は何を価値あるものと考えるか
・顧客が価値あると考えるものを、我々はどの程度提供しているか
（顧客が買うのは、製品やサービスではなく、価値とか役立ちである）
４．我々の成果は何か
・使命に則り、組織の成果をどのように定義し、どのように測定するか
５．われわれの計画をどうするか
・どこに重点を置くべきか ・優先順位をどうするか ・実行方法は
以上、戦略や経営計画の検討に有効活用して頂ければ幸いです。
時代が求めるリーダーシップ
混迷の時代と言われる中で、リーダーシップを求める声が高まっています。
ある著名な経営者の経験から語られた、リーダーの条件を味わってみましょう。
１．心の中に羅針盤を持つ人
刻々と変る経済・社会情勢の中で、リーダーは日々小さな、しかし高度な
修正を繰り返しています。向かっている方向に間違いはないかを、常に
自問し、決断をします。若干の遠回りをしても、目標の方向を見失わない
ことが重要です。そのために必要なものが心の中の羅針盤です。
２．明日を語れる人
先行き不透明な時期が続き夢を持ちにくい時代だからこそ、リーダーは
社員の１人１人に夢を与え、明日への希望を説く必要があります。
３．自ら道を切り開く人
新しく生まれた新しい時代の人たちは、新しい仕事、新しいテリトリーを作る
べきです。他人の築いた領分を冒す引け目を感じずに思いきりやれます。
４．自分を変えることのできる人
自分自身が変らない限り、相手は変りません。今ある自分の原点を再確認する
ことが、自分を変えることに繋がります。自分の個人目的だけが頭を覆って
いるような時、自分の原点を忘れ、無理に相手を変えようとするのです。
大切な顧客とは
わが社にとって大切な顧客とはどのような顧客でしょうか。「そりゃー決まって
いるじゃないですか。沢山買ってくれる客ですよ」という声が上がりそうですが、
ちょっと短絡的すぎるのではないでしょうか。沢山買ってくれる客はもちろん大切
です。しかし、その客は来年も再来年も、５年先も沢山買ってくれるでしょうか。
その確信を持てなければ、必ずしも大切な顧客の中に入れられません。今は大した
金額に至るほど買ってくれませんが、将来の長きに渡って沢山買ってくれるとの
確信を持てる客は、大切な顧客というべきでしょう。
しからば、将来の長きに渡って沢山買ってくれるとの確信を与えてくれる客とは
どんな客なのでしょうか。おおよそ次のようなことが言えるでしょう。
・意欲的に成長分野に事業展開を進めている客
・わが社にいち早く情報を流してくれる客
・わが社の技術やノウハウの価値を認め、協力を依頼してくる客
・わが社に難問を投げかけてくる客
・わが社が提供する情報、サービス、提案等を期待を持って受け止めてくれる客
・わが社の仕事に必要な大切なことを学ぶ相手となる客
・わが社を信頼してくれている客
顧客管理や営業戦略策定のお役に立てて頂ければ幸いです。
本当の品質は「業務品質」
この度の大不況を経て、不良率の上昇に悩む企業が増えていると言われます。
企業が悩んでいるポイントは、日本企業が得意とする従来型の品質管理活動では
解決しきれない状況だということのようです。ＴＱＣに代表されるこれまでの
活動の成果により、社内の製造現場での不良の占める割合は減少しています。
社外との関係、社内外の情報伝達、開発段階など、従来と違った業務分野に不良の
原因が見い出されるのが現実です。少品種大量生産から多品種少量生産への転換、
開発・設計期間の短縮、外注比率の増大などがこの傾向を助長しているようです。
この問題の解決のためには、品質管理に対する考え方を変える必要があります。
ＴＱＣは不良の原因を作業工程に求めて成功しました。しかし品質とはあくまでも
製品の品質のことでした。そうではなく開発、営業、設計、調達、外注、製造、
納入、サービスなど、製品開発から顧客に使って頂くまでの全業務の品質が、
改善・向上の対象と考えるのです。上記したような不良の原因の除去は、この
考え方からしか生まれてこないでしょう。また、昨今のＩＳＯの普及により、
品質とは規格に合わせることではなく、顧客の要求に合わせることだという
考え方が一般化しつつあります。規格に合わせるのなら、製品を対象として済む
ことですが、顧客の要求は製品の性能や仕様に限りません。業務品質の高い企業
から顧客の要求に合う製品が生まれます。品質管理とは業務品質管理なのです。
ご存知ですか「魔法の時間」
多くのビジネスマンは１週間というスパンで動いていることが多いと思います。
行動計画も１週間単位で立て、結果の反省やフォローも１週間でやるといった具合
です。営業会議などは１ヶ月サイクルで行われることが多く、開発プロジェクト
などは数カ月にわたる計画となりますが、実際に行動する１人１人は、１週間
ごとの行動計画の積み重ねで自分の目標を達成しようとします。毎週の目標を達成
し続けることが最終目標の達成に繋がると考え、週目標の達成に努力する訳です。
しかしながら、週目標の達成は容易なことではありません。状況が変わる、新しい
急ぎの仕事が飛び込んでくる、計画もれの作業が見付かるなどによって、
計画変更を余儀無くさせられたりします。この類の週目標未達成の理由で一番
多いのは時間不足です。このようなレベルの時間不足を克服する手段として、
ロジャー・プラックは自著の中で「魔法の時間」を計画化することを勧めて
います。１週間の計画の中に、１時間でも２時間でもよいから、自分が自由に
使える時間を計画的に入れておくということです。何かが起こった時はこの
「魔法の時間」が威力を発揮します。計画通りに進んで「魔法の時間」を我が
ものにできた時は大へん嬉しいものです。忙しいビジネスマンほど、普段から
やりたいことを多く抱えているからです。
真の経営者は拍手する
拍手される人は舞台の上にいる演技者です。拍手する人は観客席の観客か、更にその後方で
見守っている演出家やプロデューサーです。ビジネスマンや経営者にもこの両方のタイプが
あるようです。自分がどちらのタイプかを振り返ってみることは、先のことを考える上で重要な
ことと言えるでしょう。ビジネスで成功するのは、恐らく拍手する側の人に多いでしょう。
ビジネスや商売とは、取り引きの相手に喜んで頂くことの追究で成り立っているからです。
一方、優れた芸術的成果は、芸術家の保有する特異な才能の発現を自己主張することで生まれ
ます。拍手する側の人と拍手される側の人との成功パターンは全く逆なのです。
最近のベンチャー経営者には拍手される側のタイプが多いように見えます。商売の基本である
取り引き相手に喜んで頂くことよりも、自分の優れたアイデアの自己主張に重心を置いている
印象が強く感じられるからです。破綻したベンチャー経営者は殆どが拍手される側の人だったの
ではないでしょうか。そうは言っても、拍手される側の人でも成功した経営者が少ない訳では
ありません。むしろこのような経営者の方が世間に名を知られています。こういう経営者の
近くには、拍手する側のタイプの女房役がピッタリと付いているものです。自社に合った
経営の仕方や体制を考えるために、このような物の見方も有効でしょう。
業務改善活動の目標設定と結果の評価
QCサークル活動が導入されて以来、業務改善活動は経営改善手法の定番となっているよう
です。方法論としては、品質管理活動、生産性向上運動、組織開発、リエンジニアリングなど
百科撩乱です。多くの企業で実施され、成功例もあれば、失敗例もあります。推進担当者が
成果を強弁していても実は失敗だった例もあるようです。成功と失敗の別れ目は次のような
事例の中から学び取ることができます。
ある部門でロスコスト削減のための活動として、マニュアル作成に取り組みました。全員の
努力の結果マニュアルが完成しました。成果発表会でこれを発表し、努力が認められて賞を獲得
しました。めでたしめでたし。今までの改善活動によく有ったパターンです。この部門は業務
改善の成果として、どれだけ業績貢献できるでしょうか。全く判りません。業績貢献の度合が
全く判らない活動を表彰するという、ナンセンスが見過ごされてきた訳です。
この活動に必要なことは、過去のロス発生の行動内容、回避コストも含めたロスコストの額、
ロスが発生した業務プロセス等を明確にした上で、このマニュアルが適用される業務プロセス、
適用により発生を防げるロスコスト削減の予想額を、目標設定段階から明示することです。
そして結果の評価も実績ベースで同様にすることです。これで業績貢献の度合が見えますね。
管理者の言動で気になること
管理者とかリーダーとか言われる人たちはどのようなことをすればよいのでしょうか。
普段からこのことを真剣に考えている人は意外に少ないような気がします。なぜならば、
管理者に相応しくない言動があまりにも多く聞こえてくるからです。「君たちがそんなこと
ばかりするから、おれは何時までたっても楽になれないよ」「あの程度のレベルの課員ばかり
ですから目標に届かなかったんです。もっと優秀な課員をまわしてください」「私自身が
動き回って目標を達成しました。とても部下には任せられません」「あの男の業績の大部分は
私がお膳立てしてあげたんです。彼の実力じゃあないですよ」とういようなセリフです。
管理者やリーダーとは１つの組織を預かっています。管理者の業績とは預かる組織の業績の
はずです。管理者の能力とは預かる組織の目標を達成させる能力です。組織の目標を達成する
ために組織メンバーを育てることは管理者の重要な任務です。自分の実力を誇示するのではなく
自分を超える部下を育て、その部下に尊敬されることこそ管理者名利ではないでしょうか。
管理者は個人行動で評価されるのではなく、預かる組織の行動で評価されるのです。管理者が
組織メンバーのことを悪く言ったり、蔑んだりして良い組織行動や組織の業績が生まれる訳が
ありません。こういう意識を持った管理者が多くなってほしいものです。
お客さま第一主義
この言葉は聞き飽きるくらい耳にしている人が多いと思います。
しかしながら、この言葉を肌身に感じて理解している人は意外に少ない
ようです。「お客さまのおっしゃる通りに致しますから」という
セリフは、いかにもお客さま第一主義の言動のように見えます。
今、お客さまから何かを要求されたとします。それをどのような形で、
どのようなやり方で実現するかが問題です。Ａさんは「お客さまの
おっしゃる通りに致しますから、ご指示を頂けませんか」と申し出ました。
Ｂさんは、自社の能力ではどうすればよいかを考えたいと思い、返事の
約束をして帰りました。そして約束の日に「こういう形で、こんな
やり方でやろうと思いますが、何か支障が起こるでしょうか」と
お客さまに尋ねました。
この二人を比較してみますと、Ａさんはお客さまに知恵を出させて
それをもらおうとしているのに対し、Ｂさんはお客さまに自分の知恵を
提供しようとしていると言えるでしょう。
知恵を提供することは一つの顧客サービスです。長い目で見て、どちらが
お客さまにとって有り難い相手かを考えてみるのもよいでしょう。
「お客さまのおっしゃる通りに致しますから」という言葉は、お客さま
第一主義の逆を行っているケースの方が多いような気がするのですが、
如何でしょうか。
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